フィンランドで今月から2000人を対象にベーシックインカムを試験的に導入する試みが始まった。
対象者には収入や資産、雇用状況にかかわらず、毎月一律560ユーロ(約6万8000円)が支給される。この試みは2年間実施されるという。
ベーシックインカムを試験導入、2千人対象 フィンランド(CNN)

最終的に否決されたものの、スイスではベーシックインカムの導入の是非を問う国民投票が昨年行われたり、オランダで昨年から実験が行われたりと、ここ最近急に動きがでてきた。
個人的には、ベーシックインカムとか負の所得税は理論上の話で現実感がなかったが、実際に導入する国が出てくるのは時間の問題になってきたように思える。

下記で、7年前にブログに書いたベーシックインカムと負の所得税に関する記事をサルベージしたので、備忘記録として残しておく。

負の所得税
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正・負の所得税分岐点を200万円、税率40%とする。
稼得収入(勤労収入)がゼロの人であれば(200-0)×40%の80万円が負の所得税として支給されることになる。
稼得収入が200万円の人の所得税はちょうどゼロとなり、これを超えると正の所得税が課されることになる。
負の所得税モデルでは、稼得所得をX、最終所得をYとした場合の関数は以下のようになる。
Y=0.6X+80
負の所得税では図の赤で囲った部分で示したように、稼得所得が増えれば支給される負の所得税額が減っていく。このため、低所得層においては以下で述べるベーシックインカムよりも勤労意欲を減退させやすいと言われることがある。

ベーシックインカム
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ベーシックインカムは国民であれば無条件で一定額を支給するというもの。例では、国民全員に80万円が支給されたとし、稼得所得に対する税率は先と同じく40%とする。
稼得所得がゼロであれば最終所得はベーシックインカムによる80万円となる。
稼得収入が200万円の場合は200×40%の80万円の所得税がかかるが、ベーシックインカムによって80万円の収入があるため、最終的な所得は200万円となる。
ベーシックインカムモデルにおいて、稼得所得をX、最終所得をYとした場合の関数は以下のように表すことができる。
Y=0.6X+80
実は、負の所得税もベーシックインカムは同じ計算式になる。負の所得税とは違いベーシックインカムは所得に係わらず一定の所得税が徴収されるものの、稼得所得が増えればそれに応じて最終所得も増加する。
関数が同一であることから自明であるが、負の所得税とベーシックインカムは前提が同一であれば最終所得も同じになる。

では、何が違うのか。異なる部分をまとめると下表のようになる。
- 負の所得税 ベーシックインカム
資力調査 あり なし
支給時期 事後 事前
支給対象者 低所得者 全員

大きな相違点として、資力調査(各人別の正確な所得の把握)の有無と支給時期が挙げられる。資力調査は、負の所得税だと計算の前提となる正確な稼得所得の把握が絶対的に必要となり、そのため支給時期は事後になる。一方ベーシックインカムにおいては無条件定額支給なので、こうした調査は不要であり、支給時期は事前でも可能だ。

負の所得税は経済学の巨魁ミルトン・フリードマンが強く推奨した政策として有名だ。この政策は企業に課される最低賃金制度を廃すことで労働需給を市場均衡点にまで下げられることと、負の所得税という最低給付金を低所得者に保証することによって人々が望む方法で自由に生きることを可能にするというメリットがあるとされている。
これらの特徴はベーシックインカムにも当てはまるが、ベーシックインカムは費用がかかりすぎるという問題や伝統的な家族モデルが崩壊するのではないかという懸念(支給対象が個人単位なので)をフリードマンは抱いていたようだ。